人間ーこの動く建物
「人間ーこの動く建物」と看破したのは、操体法(そうたいほう)の創案者である、橋本敬三先生です。橋本敬三先生には、お会いすることはできませんでしたが、私の整体・施術の師は、橋本敬三先生の最後の愛弟子「今昭宏」先生です。
私、せんぼくバランス治療院が行っている施術のすべては、仙台操体医学院の今昭宏先生から学んだことです。今先生に師事したこと、橋本敬三先生の著書に出会えたことには、心から感謝しております。
それでは、橋本敬三先生が提唱する「人間ーこの動く建物」とは、どのようなものなのでしょうか?
単純な家屋構造にたとえよう。四つの土台の上に四本の柱を立て、屋根を合掌で組み合せ、中央を棟木でつなぎ、屋根を葺き、天井を張る。この棟木の前方に頭を付け、後方に尻尾を付ければ、四足の哺乳動物となる。前方合掌は肩甲、後方は骨盤に当たる。内臓は屋根裏にセットされ、中枢神経の脊髄は棟木の管腔を貫くし、自律神経はこれに並行する。人間はこの動物が後枝で直立したものである.
(橋本敬三著「生体の歪みを正す」:創元社 P6)

この建物が動くのである。しかも連動する。そして、少なくとも四つの営みが自然法則に反すれば、運動系は形態学的に、また運動力学的に、歪む。
(橋本敬三著「生体の歪みを正す」:創元社 P6)
人間という建物は、動く。動く建物である。その動き、営みが、つまり、生き方が自然法則に反すれば、この動く建物は、歪みます。
われわれの生命現象において、他人に代わってもらえない最小限四つの営みがある。呼吸、飲食、身体運動、精神活動であるー性生活ももちろんあるが、四つは常時必須ー。これらの営み方には、それぞれ自然法則があり、反則すればアンバランスが起こる。
(橋本敬三著「生体の歪みを正す」:創元社 P5)
私が生きていくために、他人に代わってもらえない、自分が自分で行わなくてはならない営み、私が私であり、私でなければできない営み。それが「息(いき)・食(しょく)・動(どう)・想(そう)」と言われています。
この四つの営みが、自然法則に反すれば体は歪み、病気となってしまいます。
ここでは、この四つの営みのうち、身体運動・動の歪みについて説明します。身体運動・動の歪みを正すことが整体ですから。
動く建物はなぜ歪むのか?
人間ーこの動く建物ーには構造運動力学が作用する。ストレッサー(注:生体に影響を与えるストレス・外圧、生体を歪ませる原因となるストレス・外圧、の意味であると解釈しております)により、骨格の組合せがズレると、これに連結する横紋筋に異常緊張が起きる。過剰運動で、筋が異常緊張に陥り、緩解しないときにも骨格の配列にズレが起こる。筋の異常緊張が持続すれば、これらを包接する軟部組織には内圧の変化が起こる。
(橋本敬三著「生体の歪みを正す」:創元社 P7)
①顚倒、打撲のような外からの力が加わると、骨格の組合せがズレます。
②運動のやり過ぎ、同じ動作の反復が続くと、筋肉が異常緊張を起こし、その緊張、張力が骨格の配列をズラします。
このような「ストレス・外圧・外からの力」によって骨格の組合せはズレてしまいます。
骨格がズレると、動く建物は歪みます。
ここで、もう一つ大切なことを橋本敬三先生は、述べておられます。
「筋の異常緊張が持続すれば、これらを包接する軟部組織には内圧の変化が起こる」。
軟部組織の内圧の変化が、いわゆる「コリ」を生む、と説きます。これが「コリ」ができるメカニズムです。同じ筋肉を使いすぎて、その筋肉に異常緊張が続くと、筋肉の内圧が変化を起こし「コリ」ができます。
緊張部位の組織の凝結こそ「ツボ」にあたるのであって、指圧すべく、灸すべく、鍼すべき急所である。
(橋本敬三著「生体の歪みを正す」:創元社 P53)
緊張部位の組織の凝結とは、「コリ」のことであり、「ツボ」とは「コリ」のことなのです。
この「コリ」を「整形内科」を提唱する医師たちは、「ファシア・Fasia」と名づけました。
そして、せんぼくバランス治療院のサイトでは、このコリを「コリ・ファシア」という用語で統一して使っております。
なぜ「コリ・ファシア」はできるのか?
橋本敬三先生は、「筋の異常緊張が持続すれば、これらを包接する軟部組織には内圧の変化が起こる」と説きます。内圧が変化することで、コリができます。
内圧の変化から、「コリ・ファシア」が形成される過程については詳述しておりません。「コリ・ファシア」について医学的・生理学的な定説が確立しているのかは、不勉強な私では、申し訳ないことに、わかりません。また、このような「マクロ」な研究は、研究価値のないものとして、いまだに研究されていないのかもしれません、、、。
「コリ・ファシア」が形成される過程については、大変、比喩的な表現になるのですが、雪が氷に変化する過程を思い描くと良いのではなかろうかと思います。
路面に雪が積もり、足で踏み固めたり、車の重さで踏み固められると、そこは、氷に変化します。雪も氷も構成する分子は同じわけですが、踏み固められることにより、「圧」がかかることにより、分子同士がより密に結合することになり、雪は氷に変化します。
同じように、筋肉も「コリ・ファシア」も同じ軟部組織にちがいありませんが、筋肉の異常緊張が続いて、内圧が変化すること、「圧」がかかることで、筋肉同士の細胞がより密に結合することになるため、筋肉に「コリ・ファシア」が形成されるのだと想像します。
内圧が変化して、「圧」がより多くかかると、細胞同士が雪が氷になるように癒着するのではなかろうか、と思われます。
それでは、氷を砕くには、どのような方法があるでしょうか?その一つは、氷に「つるはし」を打ち込み、「つるはし」を前後左右に動かすことは、有効な方法です。「つるはし」を打ち込むとは、「圧」をかけるということです。「圧」をかけて動かします。これは、鍼の技法のひとつである「雀啄(じゃくたく)」であり、筋膜リリースの方法でもあります。
「コリ・ファシア」に「圧」をかけ、動かし、筋膜リリースすることは、「コリ・ファシア」を解消する有効な方法となります。
動く建物が歪む原因
人間ーこの動く建物は、外からの力、外圧をうけると、歪んでしまいます。
ストレスが起きれば、まず第一に知覚異常が起こり、ストレスが進展すれば機能異常が生ずる。さらに進めば、ついに器質変化をも招来し、その間、伝染も起こりうる。
(橋本敬三著「生体の歪みを正す」:創元社 P257)
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- 知覚異常(痛み、コリ感、だるさ、しびれ、ピリピリ感、などの愁訴)
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- 機能異常(腕が上がらない、足が上がらない、指がゆごかない、など体が思い通り動かなくなる)
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- 器質異常(体の特定の部分が腫れたり、色や形が変わってしまいます)
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- 伝染
人は、体の歪みの変化を、知覚異常、違和感、いつもと違う感じ、不定愁訴として察知することになり、次の段階として、動きの悪さ、思った通りに体が動いてくれなくなり、さらには、体の形が変化してしまいます。
そこで、運動系の歪み、すなわち力学的ストレスとは、いかにして起こり、いかなるものであるか、ということを説明しなくてはならない。
運動系が受けるストレツサーを力学的に見ることにしよう。一挙に器質変化まで起こす苛烈な損傷を除外して考えた場合、
(1)外力の暴力があるー衝撃、顚倒、打撲、、、。
(2)過激急速なる自力運動ー投擲、跳躍、、、。
(3)緩徐ではあるが、常に繰り返される持続的な運動ー或る職業的労働の如き、日常の起居動作の如き、、、。
(4)外見上は運動していないように見えるが、長時間、持続的に、或る特定の姿勢を保持するところの支持運動ー起立、正座、その他の静作業、、、。
(5)ひとたび運動系配列に歪みが起きてしまうと、そこに作用する地球引力、すなわち体重が偏差して働くー左右の足底に平均して重力がかかつている人は少ない。どちらかに多くかかるようになる。
(橋本敬三著「生体の歪みを正す」:創元社 P258)
動く建物に外的ストレスをあたえるものは、
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- 外的暴力(顚倒、打撲)
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- 過激な自力運動(走りすぎ、ジャンプ、素振り、スイング、運動のやりすぎ)
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- 持続的な運動(仕事の動作、作業の継続、持続)
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- 持続的な運動(座りっぱなし、立ちっぱなし)
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- 重力
このような外からの力を受けると、外的打撲では、直接、その瞬間に骨格が歪みます。過激な自力運動、持続的な運動、姿勢の保持が続くと、同じ筋肉ばかりを使うことになり、その作動している筋肉が異常緊張を起こします。さらには、その異常緊張、張力が骨格の配列をズラすことになり、動く建物は歪みます。また、筋の異常緊張が持続すれば、骨格の配列をズラすばかりではなく、これらを包接する軟部組織には内圧の変化が起こり、コリ・ファシアが形成されます。
歪んだところには、重力は常にかかっているため、その歪みは、黙っていても進行することになります。
このような外的な力、ストレスが、動く建物に加えられると、動く建物は、次のような変化、形態的変化を示します。
以上のようなストレッサーが運動系に加えられるときは、その人にとっての時間的、空間的の恕限度(じょげんど:注「許容度、許せる範囲の意」)を越えると物理的に見て、
(1)筋肉を主とする軟部組織には、まず緊張変化を起こす。次に
(2)組織内の還流体液の停滞、組織の膨張、そして内圧の変化が起こる。すなわち凝ってくる。化学的にも変化が当然起きてくるであろう。
(3)骨格を主とする硬組織では、かくして間接的に、または直接的に、関節の変位を生じ、
(4)骨膜の充血、肥厚その他を起こして、軟骨の変形、最後には骨の変形にも及ぶ。
(橋本敬三著「生体の歪みを正す」:創元社 P258)
①筋肉をはじめとする軟部組織には、異常緊張が起き、②組織内の内圧が変化し、コリ・ファシアができます。さらには、③関節が変位し、④軟骨の変形、骨まで変形してしまうことになります。
整体へのアプローチ
人間ーこの動く建物が、歪むと、この建物は自ら、違和感、痛み、こり感、張る感じ、しびれ感などの不定愁訴を感じ取ります。
運動系における異常、すなわちアンバランスが生じたときには、軟組織、主として筋肉の緊張異常と、関節によって連結されている骨格の硬組織における配列の異常とが、同時におきているのであって、よく観察するなら、脊柱においてのみならず、四肢、肩甲、骨盤および頭蓋においてすら、これが見られるのである。
(橋本敬三著「生体の歪みを正す」:創元社 P260)
このように動く建物が歪んでしまったときは、軟組織である筋肉には緊張異常が、硬組織である骨格には、その配列の異常がおきています。
この筋肉の緊張異常、骨格の配列異常を正すことが、盛岡せんぼくバランス治療院の整体のアプローチとなります。
軟組織・筋肉へのアプローチ
軟組織・筋肉へのアプローチを説明するためには、その前提となる「ひとつのこと」を確認しておかなくてはなりません。
われわれは手足を動かしたり運動したり移動したりなどの身体の運動をするが、これは骨格に付着している骨格筋の収縮によって関節が動いて行われる。
(社団法人 東洋療法学校協会編 佐藤優子・佐藤昭夫他著:「生理学」医歯薬出版:P212)
筋肉は脳をはじめとする中枢神経からの作動情報を神経線維を通して受け、動く。「収縮」する。「筋肉は収縮する」。このことが大前提です。繰り返します。「筋肉は収縮する」。
筋肉は、収縮する動きしかしません。筋肉は「伸ばす」動きはできません。伸ばすように見えるのは、収縮する筋肉の反対の動きをする筋肉、拮抗筋が「収縮」しているために伸びているように見えるのです。
一番理解しにくいのは、「腕を伸ばす」動作だと思われます。確かに、腕を前に伸ばすことは、当たり前のことですが、できます。これども、この動作は、腕を前に「伸ばして」いるのではなく、肋骨と肩甲骨を結ぶ筋肉である「前鋸筋」が収縮することにより、肩甲骨が前に伸びるのであって、この動作は、前鋸筋が収縮したことの結果、腕が前に伸びている動作なのです。腕の筋肉が伸びているのではありません、前鋸筋という筋肉が「収縮」しているのです。
筋肉の「痛み」と「張り」を指標として整体する
人間ーこの動く建物が、歪むと、この建物は、違和感、痛み、こり感、張る感じ、しびれ感などの不定愁訴を訴えます。なかでも、この「痛み」と「張り」は特徴的な不定愁訴だといえます。
軟組織である筋肉を使いすぎると、筋肉は異常緊張が続き、内圧が変化し、「コリ・ファシア」が形成されます。「コリ・ファシア」ができた筋肉を収縮、作動させると、痛みがでます。
そう、「動くと痛い」のです。「動く筋肉が作動する」から痛みが出るのです。
筋肉に「コリ・ファシア」が形成されると、コリ、かたまり、凝結、いわゆる障害物ができることですから、筋肉の収縮が円滑に行われなくなります。コリ、かたまり、凝結ができた筋肉とは、すでに筋肉が収縮してしまい、円滑な動きができない状態になっていることです。これをさらに収縮させると、さらなる負荷がかかり、筋肉の付着部に張力・牽引力が発生し、「痛み」が生じるのだ、と考えます。
それでは、「凝り感」、「張り」、「つっぱる感じ」とは、どのようなものでしょう。筋肉は、繰り返しになりますが、収縮することしかできません。
背中や首すじにかけて、「凝り感」や「張り」を訴える方は多いものです。この症状は、背中や首筋の筋肉が「引っ張られる」こと「ストレツチ」されることにより生じます。

肩甲骨が外の方向に引っ張られる、伸びることにより、頭蓋骨と肩甲骨・鎖骨を結ぶ僧帽筋も引っ張られます。張力・牽引力が生じます。このとき感じられる違和感、異常感覚が「コリ感」であり、「張る感じ」である、と考えております。

僧帽筋の走行に沿った「コリ感」や「張る感じ」や、同じように肩甲挙筋の走行に沿った「コリ感」や「張る感じ」は、僧帽筋や肩甲挙筋が引っ張られる、牽引されることによって生じる症状なのです。
ですから、「コリ感」や「張る感じ」を出している僧帽筋や肩甲挙筋に電気治療をしたり、マッサージをしても、その違和感は解消されません。
肩甲骨を外に引っ張っている筋肉、例えば、前鋸筋であったり、大胸筋であったり、上腕二頭筋といった、肩甲骨を外転する筋肉や、上腕骨に付着して外側に、肩甲骨を引っ張る筋肉の「コリ・ファシア」が原因となって、肩こり・首コリを引き起こしているのです。
盛岡せんぼくバランス治療院は、「痛み」と「張り」をこのように考え、整体しております。
硬組織・骨格へのアプローチ
骨と骨、二つの骨がジョイントしている部分が関節です。骨と骨、二つの骨を結びつけているのが筋肉です。
同じ筋肉で、同じ動作を続けると、筋肉に異常緊張が生じ、この異常緊張が長期間続くと、内圧が変化し「コリ・ファシア」が形成されます。「コリ・ファシア」ができた筋肉には、相変わらず異常緊張が続いているため、そこには、張力・牽引力が発生し、骨と骨のジョイントが歪み、骨格が歪むことになります。
歪んでしまった骨格、骨と骨のジョイントを正しいポジションに戻す整体が必要になります。
骨と骨のジョイントに歪みが生じるのは、
(1)外力の暴力があるー衝撃、顚倒、打撲、、、。
(橋本敬三著「生体の歪みを正す」:創元社 P258)
この場合もありますが、これは、整形外科の診療項目であり、盛岡せんぼくバランス治療院の適応範囲を超えております。
盛岡せんぼくバランス治療院ができることは、
(2)過激急速なる自力運動ー投擲、跳躍、、、。
(3)緩徐ではあるが、常に繰り返される持続的な運動ー或る職業的労働の如き、日常の起居動作の如き、、、。
(4)外見上は運動していないように見えるが、長時間、持続的に、或る特定の姿勢を保持するところの支持運動ー起立、正座、その他の静作業、、、。(橋本敬三著「生体の歪みを正す」:創元社 P258)
この(2)・(3)・(4)が原因となって、関節および骨格が歪んでしまったケースとなります。
筋肉に異常緊張が生じ、骨格を歪ませたケースが盛岡せんぼくバランス治療院の施術の対象ということです。
ケレドモ、カイロプラクティックと称して、むやみやたらと背骨をボキボキ鳴らして、骨格の矯正をしたり、骨盤矯正と称して、むやみやたらと骨盤の関節をボキボキ鳴らすようなことはいたしません。
盛岡せんぼくバランス治療院は、このような骨格の矯正には異議を唱える立場です。なぜなら、骨格の歪みが、筋肉の異常緊張により生じていると考えているため、この筋肉の異常緊張を解消することなく、むやみに骨格の矯正を施しても、すぐに元に戻ってしまう、と考えているからです。
盛岡せんぼくバランス治療院は、筋肉の異常緊張を解消してから、骨と骨とのジョイントを正しいポジションに戻す整体を行います。
まとめ
ここまで、人間は動く建物であり、この建物が過剰な運動などによって筋肉に「コリ・ファシア」が生成されることが原因となって動く建物は歪みます。歪んでしまった建物を元に戻すには、筋肉にできた「コリ・ファシア」を解消したり、骨格の歪みを正常なポジションに戻す施術が必要になります。施術の指標となるのが、建物の歪みの結果、自らが感じ取る「痛み」や「こり・張り」といった不定愁訴です。この不定愁訴をせいたいの指標としながら、盛岡せんぼくバランス治療院は整体しております。盛岡せんぼくバランス治療院の考え方に賛同していただけたなら、一度ご来院いただけると幸いです。よろしお願いします。

