ドケルバン病

ドケルバン病 ドケルバン病

ドケルバン病とは?

ドケルバン病とは、ばね指とともに、腱鞘炎のひとつに分類されています。

手関節・手首の親指の付け根付近に痛みを生じる疾患です。

はじめにドケルバン病について、「はり・きゅう」学校で習った教科書を引用して説明します。

手関節橈側の橈骨茎状(とうこつ・けいじょう)突起部における狭窄性(きょうさくせい)腱鞘炎であり、
この部を通る短母指伸筋と長母指外転筋を使いすぎたために機械的炎症をおこしたものである。

(医歯薬出版「臨床医学各論」P145)

手のひらを下にして、親指の付け根の部分のボコッと膨らんだ骨の所を走行する筋肉、短母指伸筋と長母指外転筋を使いすぎたために炎症がおきて、痛みをだしています、と解説しています。

ドケルバン病の臨床を重ね、完治するまでの道筋をたどってみますと、どうやら、この解説には疑問符がつくのではなかろうか?と思われます。

なぜなら、整形外科や整骨院でドケルバン病の診断をうけ、短母指伸筋と長母指外転筋に電気治療を受けたり、マッサージを受けたりしても、回復することなく、ご来院いただく方が多いからです。このことは、罹患筋、原因となっている筋肉が、「短母指伸筋と長母指外転筋ではない」、ということの証だと思われます。

炎症が起きて、痛みを出しているのは、確かに「短母指伸筋と長母指外転筋」にちがいありません。けれども、ドケルバン病の罹患筋、コリ・ファシアができて、この病を発症させている筋肉は、実は、ほかにあるのです。

コリ・ファシアができることで、短母指伸筋と長母指外転筋の腱の走行が正常ではなくなり、腱の走行が軌道を外れてしまいます。その軌道を外す原因となっている筋肉は、ほかにあるのだ、ということをお伝えします。

ドケルバン病もやはり、筋肉の使い過ぎの疾患、同じ筋肉を使いすぎたためにコリ・ファシアができてしまい、短母指伸筋と長母指外転筋の腱の走行が正常ではなくなり、炎症を起こし発症するということから、筋膜性疼痛症候群に分類できると考えております。そして、罹患筋のコリ・ファシアをリリースすることで、ドケルバン病は完治すると確信しております。

ドケルバン病の症状

ドケルバン病を発症すると、親指側の手首、親指の付け根に痛み、また、腫れを生じます。

診断にあたっては、

フィンケルスタインテストを行います。

フィンケルスタインテストとは、

親指を曲げ、親指を他の4本の指で握りこみ、さらに、そのままの状態で手首を小指側に曲げることで、痛みが生じるかどうかで鑑別します。

痛みが生じると、ドケルバン病と診断されます。

<症状例>

①鍋を持っても、鞄をもっても、手首が痛い。

②ドアのノブを回すと痛みが走る。

③ペットボトルのキャップを開けようとすると、手首が痛い。

ドケルバン病の原因

ドケルバン病の原因は、指・手・腕の使い過ぎ、それらの同じ筋肉を使い過ぎたことが原因です。

痛みが出ている部位は、親指の付け根の部分(橈骨茎状突起・とうこつけいじょうとっき)であり、そこを短母指伸筋と長母指外転筋が走行しています。

短母指伸筋と長母指外転筋の走行の軌跡のバランスが崩れてしまうことで、腱と鞘とが平行にスムーズに動くことができなくなり、摩擦が生じ、炎症が起き、痛みを発症します。

短母指伸筋と長母指外転筋の走行のバランスを乱している、原因となる筋肉を特定することで、ドケルバン病の治療は可能となります。

その原因となっている筋肉を特定するためには、やはり、フィンケルスタインテストが役立ちます。

フィンケルスタインテストとは、親指を曲げ、そして、親指を他の4本の指で握りこみ、さらに、そのままの状態で手首を小指側に曲げるテストです。

このテストで重要なことは、親指をはじめ、その他4本の指を握りこんでいる、ということです。

このテストで陽性になったから、「ドケルバン病だ」と診断できる、ということが重要なのではなく、このささやかな指と手首の動きで、なぜ、痛みが出るのか、ということを分析することが、罹患筋、コリ・ファシアが形成されている筋肉の特定に結びつきます。

親指を曲げる動作は、長母指屈筋です。

2指から5指までを曲げ、握りこむ動作は、浅指屈筋と深指屈筋です。

親指から2~5指までを握りこみ、屈曲させ、つまり、筋肉を作動させ、収縮させた上で、さらに、小指側に手首を曲げることは、親指から2~5指を収縮させた状態でストレッチ、引き伸ばすことになります。

筋肉が縮んだ状態で、ストレッチ、引っ張るということです。そこで、痛みが生じます。

コリ・ファシアが形成された筋肉は、しなやかさがなく、固くなっています。その固くなっている筋肉をストレッチ、引っ張ることで、張力が発生し、筋膜に痛みが生じると考えます。

ですから、ドケルバン病の原因は、短母指伸筋と長母指外転筋ではなく、その反対の動作の筋肉である、長母指屈筋・浅指屈筋・深指屈筋といった、屈筋群のコリ・ファシアが原因だったのです。

長母指外転筋は、回外筋、短母指伸筋、長母指伸筋および深指屈筋と筋連結がある。

(河上啓介 磯貝香著:「骨格筋の形と触察法 P184」:大峰閣)

そう、筋肉は、連結している、繋がっているのです。

長母指外転筋は、反対の動き、握りこむ動きをする「深指屈筋」と連結しているのです。

そして、さらに、「深指屈筋」は、

深指屈筋は、尺側手根屈筋、上腕二頭筋、長母指外転筋、長母指屈筋および長母指伸筋と筋連結がある。

(河上啓介 磯貝香著:「骨格筋の形と触察法 P194」:大峰閣)

尺側手根屈筋、上腕二頭筋、長母指屈筋といった屈筋群と連結していきます。

このような屈筋群のコリ・ファシアが原因となって、筋肉の連結を通して、短母指伸筋、長母指外転筋の腱の走行を乱し、痛みを出している、と、考えております。

ドケルバン病の解剖学的解説

ドケルバン病の痛みは、橈骨茎状突起の短拇指伸筋と長母指外転筋の走行する部位に発症します。

この写真が、右手の手首、長母指伸筋の腱と短母指伸筋の腱との間で、ペコンとへこんだ「嗅ぎタバコ入れ」を形成している写真です。この短母指伸筋の走行ライン上に痛みを発症します。

痛みをだし、炎症を起こしているのは、確かにここの部位なわけですが、炎症を引き起こす原因となっているのは、先に述べました通り、別の筋肉、屈筋群のコリ・ファシアが原因だと考えております。

痛みを出している、橈骨茎状突起をとりまく、これら3つの筋肉の筋連結をたどりながら、原因となっている筋肉の特定とその筋肉のコリ・ファシアを触診していきます。

長母指伸筋は、短母指伸筋、示指伸筋、長母指外転筋および深指屈筋と筋連結がある。

短母指伸筋は、長母指屈筋や長母指外転筋と筋連結がある。

長母指外転筋は、回外筋、短母指伸筋、長母指伸筋および深指屈筋と筋連結がある。

(以上、3つの筋肉とも、河上啓介 磯貝香著:「骨格筋の形と触察法 P184」:大峰閣)

さらには、ここが大事な点なのですが、長母指伸筋とも長母指外転筋とも筋連結のある深指屈筋の筋連結もたどっていきます。

深指屈筋は、尺側手根屈筋、上腕二頭筋、長母指外転筋、長母指屈筋および長母指伸筋と筋連結がある。

(河上啓介 磯貝香著:「骨格筋の形と触察法 P194」:大峰閣)

すると、上腕二頭筋、力こぶの筋肉まで、その治療の範囲は広がりますから、指先から、前腕、上腕と、腕全体を視野に入れながら治療を進める、と、いうことになります。

ドケルバン病になりやすい職業・動作

①看護師・介護士 (患者さん入所者さんを抱きかかえたり、移動させたり、手をグー、握りしめる動作をしながら、力仕事をしてしまいます)

②育児中のお母さん (赤ちゃんを抱っこしたり、授乳したり、手をグーしたり、抱きかかえる動作が一日中続きます)

③事務職 (ペンを握る動作は、パソコンが事務仕事の主流となったとはいえ、まだまだペンで書く作業はあります。特に小指側で握りしめるとドケルバン病を発症しがちになります)

ドケルバン病の治療

ドケルバン病は、ここまで、述べてきたように、特定の指、手を使いすぎたことにより、その指の筋肉、手の筋肉にコリ・ファシアが形成され、手首の付け根を通る、短母指伸筋、長母指外転筋の走行のバランスが崩れ、腱と鞘との間に炎症が生じ、痛みを発症する疾患です。

筋肉に形成された、コリ・ファシアが原因ですから、ドケルバン病も筋膜性疼痛症候群(きんまくせいとうつうしょうこうぐん)の一つに分類できると考えます。

治療に際しては、筋肉に形成された、コリ・ファシアを筋膜・骨膜リリースによって、もみほぐしていきます。

コリ・ファシアの特定には、ドケルバン病の鑑別診断法である、フィンケルシュタイン・テストを行いながら、どのポジションに触れると、痛みが緩和されたり、解消されたりするかを見極めます。

コリ・ファシアのポジションに触れることができると、痛みは緩和・解消されることが、ほとんどです。

「そこ」に触れることができるかどうか、が鍵を握ることになります。

ドケルバン病の治療期間は、「ばね指」ほどは長期化せず、比較的、短期間で完治できるようです。

一週間に一度のご来院をお願いしております。

ドケルバン病の治療を受けた感想

3年前からのドケルバン病・腱鞘炎
盛岡市 O・C様

3年前に、ドケルバン病と診断されましたが、せんぼくバランス治療院に通うようになって、日常生活での動作が非常に楽になりました。

薬などを使用することもなく、手技だけの治療なので体に安心です。

ドケルバン病について、分かりやすく説明して下さり、自分でも痛みをとる方法を教えていただきました。

もっと早く来れば良かったです。

ドケルバン病の臨床例

看護師さんの症例

この方は看護師さんで、左手の手首にドケルバン病を発症してしまいました。問診を進めていくと、日常の看護業務の動作のなかに、患者さんをベッドから介助する作業が多いことがわかりました。

患者さんをしっかり手で支え(グー、握りこむ動作です)、両手を前に伸ばして、押したり・引いたりの動作です。

運動学的に記述すると、

指の屈曲、また、前腕の屈曲・伸展、上腕の屈曲・伸展もともないます。

そんなことを念頭におきながら、筋肉のコリ・ファシアを探っていきます。

やはり前腕です。

前腕の前面がもうパンパンなのが伝わってきます。

特に、前腕の中央部です。

ちょうどここの深部には腱鞘炎の鍵をにぎる「長母指屈筋」が走行しています。

そして、ドケルバン病の検査であるフィンケルスタイン・テストでは、親指を握り込みます。

つまり、親指を屈曲・対立させてから、手首を尺屈します。

長母指屈筋にコリ・ファシアがあると、手首の尺屈でさらにストレッチ、張力がかかり、痛みが出現します。

ですから、まずは、この長母指屈筋の筋膜リリースから始めてみます。

少々、可動域制限は解消されましたが、まだまだ不十分です。

長母指屈筋の筋肉の連結をだどっていくと、長母指屈筋ー深指屈筋ー上腕二頭筋と続きます。

すると、上腕二頭筋の停止部にコリを触れます。

上腕二頭筋の停止部は橈骨の橈骨粗面です。ここが、もうゴリゴリです。

触れて、筋膜リリースしますと、それは、もう痛がります。

これで、またフィンケルスタイン・テストの可動域はかなり、改善されました。

けれどもまだ、100点満点ではありません。

またさらに、上腕二頭筋を起始、はじまりに、さかのぼって触れていきます。

すると、上腕二頭筋のうちでも内側、上腕二頭筋の短頭の筋腹にコリ・ファシアを触れることができました。

ここもまた筋膜リリースすると、痛がります。

この上腕二頭筋の短頭は肩甲骨の烏口突起から始まります。

上腕二頭筋の短頭はなかなかマイナーな筋肉で、普段あまり触診することのない筋肉です。さらにさかのぼります。そう、上腕二頭筋の短頭の起始部である烏口突起周辺です。

上腕二頭筋の短頭の起始部である烏口突起周辺と肋骨に触れます。

これが、またゴリゴリで、それはもう痛がります。

「こんなに痛いのは初めてです」というほど、痛がります。

この烏口突起は小胸筋の停止部、

また烏口腕筋の起始部です。

烏口腕筋と上腕二頭筋の短頭は上腕の内側を並んで走行していて、ひとつの筋肉としてとらえることが出来ます。

この烏口突起と肋骨に対して筋膜・骨膜リリースします。

すると、フィンケルスタイン・テストの動診をしても手首の痛みが消失してしまいました。

左の手首、橈骨の茎状突起の痛みが、こんな鎖骨下の烏口突起と肋骨に張り付いていた筋肉の癒着から発生していたということです。

手首が痛い腱鞘炎といっても、やはり痛い部位が原因ではなく、遠く離れた、鎖骨下まで辿り着かなくては問題は解決しないということです。

また、確かに、看護師さんが患者さんを介助する動作を試みてみますと、この大胸筋および小胸筋も作動することがわかります。

まだまだ、お仕事をすると、この手首の痛みは再発する可能性はありますが、治療のポイントがわかったので完治するに違いありません。

 

瓶詰めを開けてドケルバン病を発症

先日、腱鞘炎・ドケルバン病でご来院いただいた方が、「また、ちょっと、痛みが出てきて」といって、ご来院いただきました。

その場では良くなっても、また戻ることは、よくあることです。なにかしら、悪くなるような日常生活のクセがあるにちがいありません。

「いろいろ、思い返してみたんですが、瓶詰めを開けようとして、きつくてなかなか開かないことがあったんです、、、」。

なるほどです。

瓶詰めを開けようとすると、

右手は、瓶詰のフタにてをあて、左手は、瓶の底を持ちます。そして、右手は、左回りに(橈側)左手は、右回りに(尺側)にまわすと瓶詰めは開きます。

左手のねじり方をみてみると、そうです、この方の手首のねじれ方とそっくりになります。

なんという、発見だったのでしょう!

瓶詰めを開けようとして、力をいれすぎて、その時、手首がねじれ、短母指伸筋、長母指外転筋の走行のバランスが乱れた、ということです。

 

ドケルバン病

搾乳が原因だったドケルバン病

産後6カ月のお母さんです。両手とも、手を動かすだけで、親指の付け根が痛くなり、整形外科を受診したところ、ドケルバン病と診断されました。搾乳のため、手を使いすぎたことが原因でした。3回の施術だけで、あとは、自力で治されましたよ。