筋膜リリースとは?
筋膜リリースとは、筋肉を包んでいる膜である「筋膜」にできたコリ・ファシアを、もみほぐしたり、「筋膜」と「骨膜」との間にできたコリ・ファシアである癒着を「剥がす」ことにより、筋膜の状態を正常にもどす手技のことです。
筋膜にコリ・ファシアができると、「痛み」や「コリ感」、「張る感じ」といった不定愁訴を感じるようになります。この不定愁訴、感覚異常を解消する手技が「筋膜リリース」です。
筋膜と感覚受容器
筋肉の表面は、筋膜と呼ばれる膜で覆われています。このページのトツプ写真に使っているように、鳥のもも肉を見ると、筋肉が筋膜で覆われている様子を身近に観察することができます。このように人間の筋肉も筋膜で覆われています。
眼を閉じた状態でも、手足の位置や曲がりぐあい、その動きなどを感じ取ることができる。これらの感覚を深部感覚という。皮下、筋、腱、筋膜、骨膜、関節などに受容器がある。
(社団法人 東洋療法学校協会編 佐藤優子・佐藤昭夫他著:「生理学」医歯薬出版P250)
深部感覚を感じ取る受容器・センサーが、皮下、筋、腱、筋膜、骨膜、関節などに分布しているわけです。
同じように、体の深いところで感じる痛みを「深部痛覚」といいます。
この深部痛覚の発生する場所は、以下のとおりです。
皮下組織、骨格筋、腱、骨膜、関節などから生じる痛みを深部痛覚という。
(社団法人 東洋療法学校協会編 佐藤優子・佐藤昭夫他著:「生理学」医歯薬出版P252)
深部感覚と深部痛覚では、微妙にその発生する場所の表記がちがってますが、骨格筋と表記されているのは、骨格筋と骨格筋の筋膜ということと解釈してよいと思われます。
このように、筋膜、骨膜には痛みを感じる受容器・センサーが分布しています。この受容器・センサーが何らかの刺激を受け取って、この刺激を電気信号に変換して、痛みとして中枢神経系および脳に伝えるわけです。
ですから、この受容器・センサーが作動する状態であること、作動する環境であることが、痛みの発生のポイントといえます。
ひとつのイメージ・イラストを下に表示します。

横の線が筋膜の線維。筋膜の線維の上に「黒まる」をつけたところが、感覚受容器・センサーです。
こんな感じで筋膜の線維と感覚受容器・センサーの分布をイメージしております。
この正常な筋膜の状態が、過剰な運動や、反復運動を繰り返すことにより、筋膜の線維が「摩擦」を起こすのではなかろうか、と想像しております。
すると、下のようなイメージ・イラストのように筋膜線維と感覚受容器・センサーの分布が変化すると想像しております。

このように、クシャクシャになった状態が、筋膜に「コリ・ファシア」が形成された状態ではなかろうか。筋膜の線維が乱れて、毛玉のようになると、「コリ・ファシア」が形成されるのではなかろうか、と想像しております。
感覚受容器・センサーが正常なポジションから、このような乱れたポジションに置かれると、この感覚受容器・センサーが、その乱れを何らかの痛みの情報として伝えるのではなかろうか、と想像しております。
全く医学的・生理学的な記述ではないわけですが、生身の人体を解剖する術などありませんから、このようなイメージでお伝えしてみた次第です。
このクシャクシャになった筋膜を正常な状態に戻そうと試みることが「筋膜リリース」です。

このようにクシャクシャな状態から、シワを「なめし」、のばし、正常な状態に戻します。戻しきれなかったところは、人体に備わっている自然治癒力にゆだね、治してもらいます。
盛岡せんぼくバランス治療院では、筋膜にできた「コリ・ファシア」をロルフィングにも似た「もみほぐし」で解消します。また、筋膜と骨膜との接合部にできた癒着した「コリ・ファシア」を手技で「はがし」ます。
この「はがし」の技術は、天城流湯治法の創案者である杉本錬堂先生と操体法の継承者である仙台操体医学院の今昭宏先生に教えていただきました。
筋膜の役割について
筋膜は筋肉を覆っている「膜」であり、その「膜」には、体のポジションを感じ取る深部感覚の受容器・センサーや、「痛み」を感じ取る深部痛覚の受容器・センサーが分布しています。また、筋肉を過剰に収縮運動させることで、筋膜に「コリ・ファシア」が形成されます。
このように筋肉を覆っている筋膜は、人体において、どのような役割を果たしているのでしょうか。
ロルフィングの日本における第一人者である、藤本靖先生(東京大学大学院 身体教育学研究科修了・「身体のホームポジション」という独自の身体論を展開、各地で講演、ワークショップなどを行っています)の講習会に参加した際に、配布していただいた藤本先生の論文を引用しながら解説していきます。
筋膜には、二つの役割があります。
一つは、筋肉や内臓を包み込むことで、そこに「空間」を作り出すことです。
二つ目は、筋肉や内臓を包み込むことで、筋肉どうし、また臓器どうしの間の連携(れんけい)、連動性を生み出します。
1つは筋肉や内臓を包み込み、その臓器が安定して存在し機能できるための「空間(スペース)」をつくること。これを筋膜の「スペーサー」としての役割とする。
空間がきちんと確保されていれば、その中にある臓器は意図してコントロールしなくても適切に機能し、本来あるべき構造を保つという自己調整の考えに基づくものである。
筋肉や臓器を包む筋膜は、身体中のあらゆる臓器が安定して存在できるスペース(空間)をつくる機能を担っている。それら空間がなくなると、臓器は十分に動くことも本来の形を保つこともできなくなる。
藤本靖著:「神経系のバランスをとり自己調整力を引き出す~ボディワークと心理療法の統合~」P106
筋肉や臓器は筋膜に包まれることで、逆に、空間(スペース)を確保することができ、筋肉も臓器も安定して、存在できることになります。
筋膜の2つ目の役割はスペーサーにより場が確保された臓器どうしをつなぎとめて身体の中に連携をつくり全体をとりまとめることである。これを筋膜の「コネクター」としての役割とする。
例えばボディワークでは肩関節と股関節のスムースな連動性を引き出すことがムーブメントの重要な要素と考えるが、両関節を直接つなぐのは筋肉ではなく筋膜である。筋膜が適切な張力と流動性を保つことで、関節の動きの情報伝達が行われて身体本来にある自然な動きの流動性(コーディネーション)が引き出される。
その他に、筋膜は筋肉と内臓をつなぐコネクターにもなっている。例えば、消化器系の機能不全により胃が硬縮すると、その緊張は筋膜を介して周辺の筋肉にも連鎖する。
逆に、無理な姿勢による腹部の筋肉の緊張が胃に悪影響を与えるということもある。
藤本靖著:「神経系のバランスをとり自己調整力を引き出す~ボディワークと心理療法の統合~」P107
筋肉と筋肉とを連動させる役割としての筋膜。また筋肉と臓器、臓器と筋肉を結びつける役割も筋膜は、はたしています。
筋膜リリースとしてのロルフィング
筋膜リリースの代表的な手技療法のひとつが、ロルフィングです。按摩、マツサージ、指圧なども筋膜に働きかけるという点では、筋膜リリースのひとつの手技療法であるといえます。
また鍼治療も体に鍼を刺すと、皮膚であり筋肉を包む筋膜にも刺すことができるので、筋膜リリースのひとつともいえます。
ロルフィングとは?
それでは、ロルフィングについてみていきましょう。
ロルフィングとは米国生まれの手技療法である。軟部組織(筋肉、筋膜、靭帯、腱など)に働きかけて、姿勢と動きの両面から身体全体のバランスをとることを目的とする。
(藤本靖著:「ロルフィング概説」:日本補完代替医療学会誌 第2巻 第1号 P37)
ロルフィングの歴史
ロルフィングの創始者アイダ・ロルフ博士(1896~1979)は米国コロンビア大学で生化学の博士号を取得した後、オステオパシー、ホメオパシー、カイロプラクティックなどの様々な治療法を研究しつつ、「軟部組織に働きかけて、身体の各部位をあるべき場所に配置し全体のバランスを調整する」理論と技術を開発した。
①筋肉、内臓など体内のあらゆる器官を取り囲み支持している「筋膜」の着目した。
②身体全体の姿勢と動きを「重力」とのバランスで捉えた。
この2点において彼女の理論にはオリジナリティがあった。
(藤本靖著:「ロルフィング概説」:日本補完代替医療学会誌 第2巻 第1号 P37)
ロルフィングの方法
ロルフィングでは、腰痛のどの個別の症状そのものには焦点をあてず、その要因となっている身体全体のバランスの崩れに対して働きかける。
具体的には脚部、骨盤、肋骨、頭部が鉛直線上に最小限の力でバランスをとれるようになることを目標として、それの阻害要因となっている軟部組織の硬縮や癒着を手技により取り除いていく。
軟部組織の柔軟性が増し、動きの可能性が広がると、身体全体のバランスがとれるようになり、結果として個別の症状の改善も期待されることとなる。
(藤本靖著:「ロルフィング概説」:日本補完代替医療学会誌 第2巻 第1号 P38)
ロルフィングの手技方法と盛岡せんぼくバランス治療院の筋膜リリース
ロルフィングでは、指、手の甲、前腕などを用いてゆっくりと時間をかけて圧を加えながら組織を押し伸ばすという独自の手技方法がとられる。
ロルフィングは筋肉そのものではなく、それを取り囲む筋膜の解放を目的としている。
(藤本靖著:「ロルフィング概説」:日本補完代替医療学会誌 第2巻 第1号 P39)
もういちど、先に示した、「コリ・ファシア」が形成された状態のイメージ・イラストを提示します。

このように「コリ・ファシア」ができて、クシャクシャになった筋膜に圧を加えながら、押し伸ばす、という手技です。クシャクシャになったシワを「なめす」感覚です。圧を加えて、ロルフィング、「なめし」を行ったあとが、下のイメージ・イラストです。

ロルフィング創始者I.Rolfは細胞を取り巻く細胞間質の可変的性質に着目し、持続的なストレスにより筋膜が硬化してしまっても適切な物理的刺激(圧力)を加えれば、流動性を失ったゲルをより液体的な状態に変化させることができると考え、独自の手技方法を考案した。
(藤本靖著:「ロルフィング概説」:日本補完代替医療学会誌 第2巻 第1号 P39)
筋膜が硬化、固くなってしまったということは、そこに「コリ・ファシア」が形成されたということです。その筋膜が硬化した部位、「コリ・ファシア」ができた部位に「物理的刺激(圧力)」をかけて、「なめす」と、流動性を失ったゲルをより液体的な状態にもどすことができる、ということです。
この「物理的刺激(圧力)」というのが、ひとつの重要なポイントです。
操体法の継承者である今昭宏先生は、この「物理的刺激(圧力)」を「快高圧」と名付け独自の視点から理論を展開しております。
また、操体法は、患者さんに自分で「楽な方向に、快適な方向に」動いてもらいながら整体していくのですが、その際、施術者は、「抵抗」といって、その動きを「止める」わけです。この動きを止める「抵抗」も、実は「物理的刺激(圧力)」の役割をはたしていると、私は理解しております。
「物理的刺激(圧力)」をかけながら、筋肉を自動的に動かしてもらっても、他動的に動かしてあげるのであっても、「物理的刺激(圧力)」がかかっていると、その筋肉組織、筋膜、「コリ・ファシア」は、やわらかくなります。
盛岡せんぼくバランス治療院は、筋膜が硬化した部位、「コリ・ファシア」ができた部位を触診で見つけることができたなら、その部位に「物理的刺激(圧力)」をかけながら動かすという手技を用いながら、筋膜リリース、筋膜の解放を目指しております。



