三軸操体法を理解するために

整体への道標

三軸操体法とは?

三軸操体法とは、操体法の創案者である橋本敬三先生の最後の愛弟子である仙台操体医学院の今昭宏先生が、橋本敬三先生から与えられた研究テーマ、「原始感覚」と「快適感覚」を土台として、池上六朗先生が創案した三軸修正法とを融合して創り出した独自の整体の技法です。

操体法の原理

今昭宏先生は、その著書「楽しくわかる操体法」(医道の日本社)の冒頭に、初めて橋本敬三先生の治療院に勤務した日の橋本先生の言葉を置いています。

「コン君は原始感覚を指導しろ!」

これは、私が橋本敬三先生の代診として温故堂診療室に勤務した初日に橋本先生に言われた言葉です。「言われた」というと静かにお話しをしてくれたように思われるかもしれませんが、実は思いっきり怒鳴られたのでした。

「コン君は原始感覚を指導しろ!」。この一言が、操体法のすべてを語っています。ですから、今先生は、この一言を、この本の冒頭に置いたのだと思われます。

操体法は、施術する者が、患者さんに治療をほどこして、治してあげる治療法ではなく、患者さんの原始感覚を目覚めさせ、患者さん自身が求めていることを、患者さんに自身に気づいてもらい、指導すること、導いてあげることです。

患者さんが訴えている「痛み」や「こり・張り」といった不定愁訴を、患者さんが感じ取る原始感覚を指標として、快適に生きていけるように導びく、指導することなのだ、と、私は理解しております。

橋本先生は、お医者さんでしたから、からだとこころの本当の治し方が知りたくて、様々な治療法や予防法などを実際にためしてみました。そして、最終的にわかったことは、「気持ちいいことをすればいい」という原始感覚が指標となるシンプルなことでした。

(今昭宏著「楽しくわかる操体法」:医道の日本社P2)

この「気持ちいいことをすればいい」とは、どういうことなのでしょうか?

橋本敬三先生は、「日本医事新報」に昭和32年10月に発表した「異常感覚と運動系の歪み」(「生体の歪みを正す」P254)の中で、

人は、感覚し、食べて、動き、考える生物である。
環境の問題、栄養の問題、運動の問題、精神思想の問題、これらはみな、それぞれ、それが異常であればストレッサーとなりうる。
(橋本敬三著「生体の歪みを正す」:創元社 P255)

と、記しています。

さらに続けて

それらのうち、セリエもまだ気がつかず、現代医学界にもまだ登場していないストレッサーとストレスとがある。

それは運動系内の力学である。

(橋本敬三著「生体の歪みを正す」:創元社 P255)

環境の問題、栄養の問題、運動の問題、精神思想の問題は、それが異常であれば、ストレッサー、つまりストレスの原因となりうるが、このほかにも、いまだに現代医学界ではストレスの原因として認識されていないストレッサーがある。それが運動系内の力学だ、と述べています。

運動系内の力学とは、これは橋本敬三先生独自の用語だとおもわれますが、運動系とは簡単にいいますと、体が動くということ、二つの骨を結ぶ筋肉が収縮することによって関節が動く、運動するということです。

この運動系の働きは、

第一に運動作用をなし、(運動作用)

第二に全身の支持作用を営み、(支持作用)

第三に重要器官(中枢神経および内臓)の確保作用をなす(確保作用)。

(橋本敬三著「生体の歪みを正す」:創元社 P256)

力学とは、力関係のことですから、バランスと言い換えることができます。

ですから、運動作用、支持作用、確保作用といった、運動系のバランスが崩れると、ストレスを感じ取ることになります。

これら(運動系の力学)が形態的、静力学的に自然であり、すなわち変形、変位せず、機能的に、すなわち動力学的に何ら故障がないならば、そのままでは、普通は異常感覚は起こらないし、健康である。

(橋本敬三著「生体の歪みを正す」:創元社 P256)

体、骨格が変形したり、変位したりせず、動きに支障がないならば、異常感覚は起こらないし、健康です。

運動系がストレッサーによって歪むとき、そこにやはりセリエのいう如きストレスが起こる。ストレスが起きれば、まず第一に知覚異常が起こり、ストレスが進展すれば機能異常が生ずる。さらに進めば、ついには器質変化をも招来し、その間、伝染も起こりうる。

(橋本敬三著「生体の歪みを正す」:創元社 P257)

体や骨格が歪むとストレスが発生します。ストレスが起きると

①知覚異常(痛み、コリ感といった不定愁訴)

②機能異常(手のこわばり、手足が思うように動かない、可動域制限)

③器質変化(体や臓器の損傷や変化)

以上のような変化を引き起こしてしまいます。ストレスが起きて、最初に感じ取る「知覚異常」に橋本敬三先生は着目したわけです。「知覚異常」の段階で体の異変を察知し、修復してあげること。「知覚異常」を察知する感覚が、原始感覚であり、快適感覚です。

原始感覚の安定感、満足感に行きつく。つきつめると快、不快となる。

(橋本敬三著「生体の歪みを正す」:創元社 P340「人間悲願の達成へ」)

原始感覚とは、つきつめると「快」、「不快」ということです。

「コン君は原始感覚を指導しろ!」とは、「快」・「不快」の感覚を指導しなさい、ということです。

「快」・「不快」の感覚を指標として、「快」でも「不快」でもない、なんともない状態、つまりバランスのとれた状態に導いてあげなさい、ということです。

「快」でも「不快」でもない、なんともない状態、つまりバランスのとれた状態というのが、「原始感覚の安定感、満足感」ということだと理解しております。

感覚とは、五感というように、視覚(目でみること)、聴覚(耳で聴くこと)、臭覚(鼻で臭いをかぐこと)、味覚(口・舌で味わうこと)、触覚(肌で感じること)の5つです。この五感を総動員して、「不快」な感じから、「快」の感じへとたどる道筋が、体の不調、ストレスから解放される道筋です。

このストレス・フリーの状態の達成こそが、操体法の目指していることだ、と、私は理解しております。

最終的にわかったことは、「気持ちいいことをすればいい」という原始感覚が指標となるシンプルなことでした。

(今昭宏著「楽しくわかる操体法」:医道の日本社P2)

「気持ちいいことをすればいい」とは、五感を指標とした、ストレス・フリーへの道筋ということです。この一言が、操体法の原理だと私は確信しております。

三軸修正法の原理

池上六朗先生が創案した三軸修正法は地球の地軸の動き、自転の動きを、その原理としています。

地球はまわってる、自転しています。自転している地球の上で私たちは生きています。それならば、この地球が自転する動きから影響を受けることなく生きることは、不可能と言えます。私たちは、地球の自転する動きの影響を受けながら生きています。

地球は、北極と南極を結ぶ線を「軸」として、軸に対して左回りに回転しています。これが右ねじの法則です。北極と南極を結ぶ線が「軸」、電流の流れであり、それによって磁場が左回りに発生します。これが右ねじの法則です。

三軸修正法は、この「右ねじの法則」を人体に応用した治療法、整体術、ということができます。

右手でグーをしてみます。親指は上に突き出します。握っている右手の2指~5指が回転の方向です。そして、突き出した親指の方向、これが電流の流れ、「軸」です。この電流の流れ「軸」に対して、磁場が左回りに、右手の2指~5指の方向に回転して発生します。この「軸」と左回りの「回転」が起こる自然現象、この自然法則を整体に応用したのが三軸修正法だと私は理解しています。

回転は常に軸に対して左回りに発生します。これは自然法則です

三軸修正法のヒトのカラダのとらえかた

① カラダは、小さな粒子がたくさん集まってできている。

② その粒子は、生物であるという秩序を保ちながらも、
   物理的な秩序の拘束も受けていて、その法則にも敏感に従うモノである。

③ その粒子は、あるときは単体で、あるときは房や群になって機能する。

④ その粒子は、内外からの作用の緩衝物、緩衝器としての機能もはたすため、その作用に対してある程度、緩慢に反応する。

⑤ たとえば、茶殻をいれたコップを持って、カラダを回転させてからコップの中を観ると、カラダの回転が止まってからも、しばらくのあいだ、茶殻はカップの中をまわっている。同じように、カラダ全体を回転させてから、カラダの回転を止めたあとも、その粒子はしばらくのあいだ、その回転を維持する。

(池上六朗箸:「三軸修正法」

このようなヒトのカラダのとらえかたを共通認識として、ヒトのカラダの動きをみていきましょう。

基本動作は6方向

身体の動きはいろいろな動きが重なりあって、ひじょうに複雑に見えますが、これを次の三つの動きに分けることができます。(基本篇)

(A)前屈・後屈

(B)右側屈・左側屈

(C)右ねじり・左ねじり

以上の3組に分類されます。

この3組の「動き」を「軸」という視点で捉えなおしてみましょう。

(A)の前屈・後屈の動作は、水平の左右に伸びた軸の回転運動(ピッチング)。

(B)の右側屈・左側屈の動作は水平の前後に伸びた軸の回転運動(ローリング)。

(C)の右ねじり・左ねじりの動作は垂直の上下に伸びた軸の回転運動(ヨーイング)

―として捉えることができます。

(池上六朗箸:「三軸修正法基本篇」)

ここまでは大丈夫理解できます。さて、ここからです。

「動き」を「軸」の回転運動として捉えます。

人が立った姿勢で「おへそ」・骨盤を中心点として考えてみますと、「おへそ」から左右の横に伸びた軸が前方に回転すると(左に伸びた軸が回転します)、体幹の前屈になり、軸が後方に回転すると(右に伸びた軸が回転します)、体幹の後屈となります。

「おへそ」から前方と後方に伸びた軸が右方向に回転すると(前に伸びた軸が回転します)、体幹の右側屈となり、軸が左方向に回転すると(後ろに伸びた軸が回転します)、体幹の左側屈となります。

「おへそ」から頭と地面に垂直に伸びた軸が左に回転すると(上に伸びた軸が回転します)、体幹の左回旋になり、軸が右に回転すると(下に伸びた軸が回転します)、体幹は右に回旋します。

このように体の動きを「軸」と軸の回転としてとらえるのが、三軸修正法の体の運動、あkらだの動きのとらえ方です。

回転運動の物理法則

物体の回転運動に伴う物理法則には

① 回転惰性(方向保持性)

② プレセッション(軸旋回)

―という二つの法則があります。

回転惰性とは、回転する物体の回転軸は、ほかからトルク(回転偶力)を受けない限り、地球の自転や公転などの運動とは関係なく、宇宙の空間に対して、ある一定の方向を保持するというものです。

プレセッションとは、回転する物体に、その物体の回転軸と異なる方向を回転軸とするトルクが作用すると、その物体の回転軸は、物体が回転することにより生じた回転ベクトルと、あとから作用したトルクにより生じた回転ベクトルを合成した方向に、最も近い経路を経て、旋回しその軸方向を変える、というものです。(基本篇)

ちょっと、むつかしい説明です。もっと簡単にまとめてみます。回転惰性とは、一つの回転運動は他からの力が加わらない限りその回転運動を保ち続けるということです。

ですから、前屈だけであれば、それは前屈だけの方向の回転運動を続ける、ということです。

トルクとは、一つの回転運動とは別の回転運動がぶつかることくらいの理解で良いと思います。例えば、前屈に対して側屈を加えれば、その側屈の運動がトルクということです。

プレセッション。これは「軸の合成」ということです。前屈して側屈のトルクを加えると、新たな方向へ回転の運動が生まれます、ということです。

プレセッション

池上先生はコマを例に説明します。

コマを、上から観て、右回りに回します。右回りに回すということは、その軸は地面、下に出ているということです。下に向いている軸に対して、右回りにコマは回転しています。

そのコマの軸の上端を、向こう側に倒そうとすると、その軸は向こう側に倒れず、右の方に倒れようとします。

この現象を整理しますと、

「コマを倒そうとすると、そのコマは、倒そうとする方向より回転方向の、90度さきの方向に倒れようとする」

というコトが言えます。

コマは、今、右回りに回っています。この軸は地面、下に向いた軸が回転しているということです。この右回りに回っている回転に対して、向こう側に倒そうとする、向こうに軸を立てる、向こうにトルクをかけると、その軸を右回りの回転方向の90度先の方向に吹き飛ばされます。

たとえば、右回りのコマを、右に倒そうとすると、倒そうとした右から、右回りに90度さきの方、すなわち、手前に倒れます。

この90度さきに飛ばされて、そこで回転運動をつづける、回転惰性を続ける。この二つの軸回転がぶつかり合い、合成される自然現象、自然法則を整体に利用するわけです。90度さき、前という意味で「プレ」という言葉を使っています。

自転車を運転しているときの回転運動を見てみましょう。

自転車のペダルをこいで走っているときは、タイヤの左横に伸びた軸の回転運動といえます。左横に伸びた軸が、右ねじの法則により、左回りに回転することによって、タイヤは回転し前方に進みます。

ここで、運転している「私」が体を右に倒します。右に倒すということは、体幹の前方に伸びた軸(この軸は左回りに回転しますから右に倒れます)、をタイヤの左横に伸びた軸の回転運動にぶつけるということです。

すると、タイヤの左横に伸びた軸の回転運動は前方にすすむ回転ですから、その回転運動の回転の方向に体幹の前方に伸びた軸をぶつけるのですから、回転方向の90度さきに跳ね飛ばされて、90度さきとは、地面・下に向かう軸の回転が合成されますから、タイヤは右に曲がる、右回旋するという自然現象が起こります。

この3軸目に起きた回転惰性を整体、体の歪みの矯正に利用するのが三軸修正法だと、私は理解しております。

三軸修正法の整体への応用方法

このプレセッションを整体に応用するには、どのような方法があるのでしょうか?

例えば、体幹を前屈する動きをよくしたいとします。それならば、軸の回転を使って、前屈の動きを作ってあげて、前屈の動きを手助けしてあげる、と、いうことが考えられます。

体幹を前屈する動きは、右ねじの法則により、「おへそ」の左横に軸を伸ばしてあげると、その軸は左回りしますから、前屈の動きとなります。

この前屈の動きをする「軸」のポジション、左横に伸びた軸に、3軸目の軸を設定してあげれば、いいわけです。

頭の上に軸を伸ばして、左回りに回転します。体幹の左回旋です。この回転の方向をたどりながら、プレセッションは90度さきに飛んで行って軸を立てるのですから、その逆に目指す左横の軸の回転方向の90度「手前」のポジションにトルクをかけ、軸を伸ばし、回転運動をさせると、左横の軸回転が実現します。その2軸目のポジションは、「おへそ」から前方・前の軸であり、前方の軸の回転は右側屈なわけです。

立位の状態から、1軸目、上に伸びた軸の左回転、すなわち、体幹を左に回旋させ、さらに、二軸目、前方に伸びた軸の左回転、すなわち、体幹を右に側屈させると、プレセッションが発生し、1軸目の回転方向、つまり左回旋の回転に沿って、前方に伸びた軸の左回転をトルクさせたので、前方の軸の90度さき、すなわち、左横に伸びた軸のポジションで3軸目が合成され、左横の軸が左回転、「回転惰性」して、体幹が前屈するようになります。

ここまでは、ひとつの例として、3軸目に左横に伸びる軸の回転の作り方を説明したわけですが、この3軸目に左横の軸を作る方法は、ほかにもあるわけです。

プレセッションは、回転している運動に、別の軸の回転、トルクをぶつけると、回転の方向の90度さきに吹っ飛んで、そこで「回転惰性」します。

整体に用いるためには、目標とする軸の90度「手前」のポジションでトルク、別の回転をぶつけなくてはなりません。

左横に伸びる軸を合成するためには、1軸目に、

真上の軸(左回旋)、真下の軸(右回旋)、前の軸(右側屈)、後の軸(左側屈)の4つの軸の回転を設定できます。

2軸目は、目標とする軸の90度「手前」のポジションですから、1軸目が決まると、おのずと2軸目が決まります。

1軸目に、真上の軸(左回旋)を使えば、2軸目は、前の軸の回転(右側屈)。

1軸目に、真下の軸(右回旋)を使えば、2軸目は、後の軸の回転(左側屈)。

1軸目に、前の軸(右側屈)を使えば、2軸目は、下の軸の回転(右回旋)。

1軸目に、後の軸(左側屈)を使えば、2軸目は、上の軸の回転(左回旋)。

このように、なるわけです。これが、自然法則であり、三軸修正法の原理だと「私」は、理解しております。

三軸操体法

ここまで、操体法の原理、また三軸修正法の原理を、私が理解した範囲で解説させていただきました。この二つの原理を理解したうえで、今昭宏先生の「三軸操体法」に挑んでみます。

操体法の「原始感覚」・「快適感覚」を指標としながら、さらに三軸修正法のプレセッションと回転惰性とを体の歪みを正す技法として用いるのが「三軸操体法」です。

例えば、体を左にねじってみます

例えば

鉛直軸・上下垂直軸の回転を左回りにしてみます。

鉛直軸の左回りということは、「右ねじの法則」のとおり、軸は上に発生しています。上に軸が発生するということは、左に回転ます。

これ、すなわち体幹の左ねじりです。

これが一軸目です。

体を左に傾けてみます


これにカラダを傾けてみます。

カラダを左に倒してみます。

カラダを左に倒すということは、「右ねじの法則」のとおり、軸は体幹の後方に発生しています。
体幹の後方を軸にしながら「右ねじの法則」のとおり、つまり左回りさせますと、カラダが左に倒れる動き、左側屈ができあがります。

これが二軸目です。

二つの動きをぶつけてみます


この一軸目の動き「左ねじり」に、二軸目の動き「左側屈」をぶつけてみますと、どの方向に回転の動きが発生するのでしょうか?

もう一度引用します。

「その傾けた方向から、カラダの回転の方向に90度先行した方向に、プレセッションは起こる」

「カラダの回転の方向」、これがつまり一軸目、体幹の「左ねじり」です。

「傾けた方向」、これがつまり、二軸目、「左側屈」です。二軸目の軸は後方に発生しています。

「カラダの回転の方向」、体幹の左ねじりの方向に対して、左側屈の軸をぶつけます。左側屈の軸は後方に発生しています。

左ねじりの回転に、後方の軸をぶつけますと、「90度先行した方向にプレセッションはおこる」。

後方の軸の左ねじり回転の90度先行するポジションといいますと、軸は体幹の「右」に発生します。

体幹の「右」の軸の回転する動きは「右ねじの法則」のとおり、左回りするのですから、後屈です。

後屈の軸回転、回転惰性が発生するわけです。

後屈の軸回転、回転惰性が発生し、そこのポジションで三軸目、後屈の軸回転が始まるのですから、後屈の動きを手助けすることになり、後屈の動きがスムースになります。

三軸修正法のむつかしさ

三軸修正法は、自然法則を原理とした、その発想の卓越性には、ほんとうに素晴らしいものがあります。

三軸修正法のむつかしさは、この軸の合成の理解ではなく、

三軸修正法を整体に用いようとした際、「はたしてどの方向に矯正、修正したら、よいのだろうか?」という問いです。

カラダの歪みを「視診」して判断できれば、よいのですが、見てもその歪みがわからないことは、しばしばあることです。

この問題に対処するために、今昭宏先生は、操体法の原理である、原始感覚・快適感覚を指標として用いることにしたのだと推測しております。

操体法の診察では、「動診」、患者さんにカラダを動かしてもらって、その動きの不具合を確認します。カラダを動かした際の、違和感、痛み、コリ感、張った感じ、そういった不定愁訴を重要視します。

「動き」そのものを新たな視点でとらえ直してみると、快適な動きにいち早くたどり着くことができるナビゲーションのようなシステムがあることに気がつきます。

(今昭宏著「楽しくわかる操体法」:医道の日本社 P130)

このナビゲーションの役割を果たすものこそが、原始感覚・快適感覚なのです。

不定愁訴を感じる「動き」があったら、そこから、「快適」な方向に向かって、逃げて、「快適」な方向に動いてあげれば、不定愁訴から逃れることができるのです。

このことこそが、 橋本敬三先生がたどり着いた、

最終的にわかったことは、「気持ちいいことをすればいい」という原始感覚が指標となるシンプルなことでした。

今昭宏著「楽しくわかる操体法」:医道の日本社 P2)

と、いうことです。

この快適な方向に向かって、三軸修正法のプレセッションを組み立てていけば、体の歪みは正されることになります。

患者さん自身の原始感覚・快適感覚を指標とすることで、カラダの歪みを患者さんから教えてもらうことができるわけです。

不快な動きとは

動きが不快に感じるときは、その動きにかかわらない他の2つの交叉軸が、その不快な動きとは反対方向に回旋してしまっているものと理解します。

(今昭宏著「楽しくわかる操体法」:医道の日本社 P130)

ここを理解するためには、池上六朗先生の三軸修正法のカラダのコントロールの仕方をみておきましょう。

① 前屈・後屈動作を楽にするには、前後の運動はせず、左屈・右屈動作と左右の回旋動作の組み合わせの動きを行えばよいのです。

② 左屈・右屈動作を楽にするには、左右の運動はせず、前屈・後屈動作と左右の回旋動作の組み合わせの動きを行えばよいのです。

③ 左右の回旋(ねじれ)動作を楽にするには回旋動作はせずに、前屈・後屈動作と左屈・右屈動作の組み合わせを行えばよいのです。

(池上六朗箸:三軸修正法基本篇)

前屈・後屈動作を楽にするには、前屈・後屈の動きの「軸」の回転をつかうのではなく、 ほかの二つの「軸」の回転をつかって動作を楽にするのです。このことを今先生は、「その動きにかかわらない他の2つの交叉軸が」と記しているわけです。

前屈・後屈の動作が「不快」に感じるときは、前屈・後屈の動作の軸回転に問題があるのではなく、ほかの二つの軸の回転によって、カラダが歪められていることに問題があるのだ、ということです。

「動きが不快に感じるとき」とは、例えばこういうことです。

腰の中心軸が前屈になっている、前かがみになっていると仮定します。そうしますと、前屈の動作が楽であり、後屈・後ろに反らす動作は窮屈になります。

骨盤が前傾していたら、前屈の動作は楽にでき、後屈の動作は窮屈になります。

「その不快な動きとは反対方向に回旋してしまっているものと理解します」。

「その不快な動きとは反対方向」とは、すなわち「楽」な方向ということです。不快な動きを感じ取ったということは、不快な動きとは反対方向に、「楽」な動きの方向にカラダは歪んでいるということを示しています。

今昭宏先生のこの一節は、理解するのに大変むつかしい。

前屈・後屈動作を楽にするには、前屈・後屈の動きの「軸」の回転をつかうのではなく、 ほかの二つの「軸」の回転をつかうことは理解できました。

前屈・後屈動作を楽にするには、前屈・後屈の動きの「軸」の回転をつかうのではなく、ほかの二つの「軸」の回転、すなわち、側屈と回旋の軸の回転運動をつかう、ということです。

さらに、「その動きにかかわらない他の2つの交叉軸が、その不快な動きとは反対方向に回旋してしまっているものと理解します」。このことは、側屈と回旋の軸の回転が、「不快」とは反対方向に、つまり、その動きが「楽」な方に回旋している、歪んでいる、ということを述べています。

前屈・後屈動作を窮屈にしているのは、この軸の回転とは、別の「側屈」と「回旋」の軸回転が「楽」の方向に歪んでいて、この「側屈」と「回旋」のプレソッションによって、前屈・後屈動作を歪めているのだ、と、いうことです。

ちょっと、むつかしい、ご理解いただけましたでしょうか?

楽とはねじれ・歪みである

「楽」ということは、実はその方向に「ねじれている」「歪んでいる」ということを意味しています。

操体法の定番の「動診」である、「膝倒し」を例に考えてみます。

「膝倒し」の「動診」は、仰向けになり、両膝を立て、両膝を左右に倒してみて、違和感を感じ取るものです。

この膝倒しの動診は、ここでは便宜上、股関節の回旋運動、体幹の回旋運動とします。

両膝を右に倒したときに、腰に違和感を感じ、左に倒すと「楽」だったとします。このことは、腰のポジションや骨盤のポジション、また背中のポジションが、両膝を左に倒した状態、左に倒した方向に歪んでいると理解することができます。両膝を左に倒した状態、左に倒した方向に歪んでしまい、クセがついてしまったため、その動きは「楽」になります。いつも行っている動作のため「楽」になってしまっているのです。

膝倒しの三軸操体法

この膝倒しの「動診」を例に、三軸操体法をつかってみましょう。

上に記したように、両膝を右に倒したときに、腰に違和感を感じ、左に倒すと「楽」だったと設定します。

左に倒すと「楽」だったので、この最も「楽」なポジションを1軸目に設定します。

左に倒す方向は、頭の方向に軸が伸び、右ねじの法則のとおり、左に軸回転している状態です。

「楽」ということは、左にカラダがねじれている、歪んでいる、ということです。

ですから、カラダの歪みを修正する方向は、右ねじり、右に軸回転させればいいわけです。右に軸回転させるためには、「おへそ」から足の方向に軸を伸ばせば、右に軸回転します。ですから、足の方向に軸を合成するように、ふたつの軸回転を合成すればいいわけです。

この1軸目は、動きを固定したままにして、回転運動はつかいません。軸回転は発生しません。

二軸目を設定します。頭の方向に軸が伸び、左に軸回転して、左に両膝を倒している「楽」な姿勢を取りながら、動きを固定し、右手を足の方に伸ばしてみたり、左に左手を伸ばしてみます。

右手を伸ばした方が「楽」であったら、右手を伸ばす動作を二軸目に設定します。

右手を伸ばす動作は、おへその上に伸びている軸が左回転することで発生します。体幹の右側屈です。

すると、2軸目の軸回転が決まると、最終的に合成したい軸のポジションは、足の方向に伸ばした軸と決まっていますから、3軸目はおのずと決まり、体幹の後屈、背中を反らす動作が右横に伸びた軸の回転運動となります。

2軸目の回転運動と3軸目の軸の回転運動をぶつけて、プレセッションを発生させ、足の向こうに伸びた軸の回転運動、回転惰性を用いて、体幹を右に回旋させ、カラダの歪みを修正します。

このように軸を合成すると、軸は、おへそから足に伸びた方向に形成され、そこで回転惰性がおこります。その方向が足に伸びた軸の左回転方向、両膝の右ねじりの動作です。両膝の右倒しが「楽」になれば、成功です。

1軸目の設定

三軸操体法では、三軸修正法にはない、1軸目の設定があります。

この1軸目の設定は、最も「楽」なポジションを患者さんに選んでもらうのですから、最も「楽」なポジション、すなわち、最もカラダが歪んだ姿勢ということです。

1軸目の姿勢をとってもらうことにより、カラダの歪みを明確にすることができます。また、修正する軸を明示することにもなります。

膝倒しの動診で、左倒しが「楽」であったなら、頭の上に伸びている軸の左の回転方向にカラダが歪んでいることがわかります。

また、修正する方向は、その反対方向、足の方向に伸びている軸の左回転の方向であることがわかります。

つまり、1軸目の姿勢を取った段階で、カラダの歪みがわかり、またその修正の方向もわかってしまうわけです。

それも、その姿勢は患者さん自らが、原始感覚・快適感覚を感じ取って選んだものです。患者さんが感じ取る原始感覚・快適感覚を指標としながら整体する道筋が開かれていくわけです。

それでは、整体の臨床に、この三軸操体法を取り入れてみてください。